天文学は遥か遠くの宇宙を見ているようで、
実は足元の地球や人間の存在について 考えることにつながる。 |
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天文学のすすめ |
150億年という気の遠くなるような長い宇宙史のなかで、46億年前に太陽系が誕生し、その第3惑星である地球は“恵まれた環境”ゆえに生命が誕生した。やがてそれは35億年以上の時間をかけて人類へと進化する。“恵まれた環境”の本来の意味を我々は知らなすぎた。また人類に至るまでの進化が、当たり前のものと信じて疑わなかった。現在の環境問題の本当の原因はそんなところにあるのではないか。現在は過去の上に成り立ち、それ故に過去の変遷を正しく知らなければ、現在の状況を正確には理解できない。 今あらためて宇宙史をふり返り、人類の存在意義を見つめ直す必要があるのではないだろうか。 @生命の星・地球の生い立ちを探る 地球を火星や金星と比較することで、地球が生命の星となった要因を明らかにする。その際、太陽からの距離や質量、大きさ等に注目し、偶然とはいえ現在の地球環境が絶妙なバランスの上に成り立ち、地球が生命にとっていかに適した星であるかを考える。 A太陽活動と地球環境との関わりを探る 太陽は地球に熱や光を与えるだけでなく、絶えず惑星間空間に太陽風というプラズマ流を吹き出している。また激しい活動と共にX線や紫外線などのエネルギーの高い電磁波も放射している。地球は大気と磁気の2つのバリアーでそれらの侵入を防いでおり、その証しの一つとして極地で見られるオーロラがある。また、人工衛星が社会生活に大きな役割を担う現代では、こうした太陽が、地球環境(地球を取り巻く宇宙空間)に及ぼす影響、つまり「宇宙天気」についての研究もますます重要となるであろう。 B地球外生命の可能性を探る 宇宙人方程式(ドレイク・セーガンの式)は、我々の銀河系のなかで高度な文明を持つ星の数を推定する方程式であるが、その数は、地球の現代文明の存続する時間に大きく依存することを意味している。またE・T探し(SETI)の現状や、宇宙における水などの生命と密接な関係のある物質(分子)の探査、そして現代の観測技術の粋を集めた「系外惑星」探索について紹介することで太陽系の構造の特異性にもふれる。 宇宙において生命が存在する可能性を探ることは、「この広い宇宙のなかで、我々は一人なのか?」という根本的な問いかけに対する人類の飽くなき追求と言えるだろう。 C現代文明の終焉と永続性について 現代の地球文明に終止符を打つ可能性が高いものとして、次の二つの要因が考えられる。 先ずその一つが、人類の手による地球環境の破壊であり、その主なものとして、地球温暖化やオゾン層の破壊、そして酸性雨等がある。 二つ目の要因として、小惑星や彗星との衝突が考えられる。'94年7月に起きた木星と、シューメーカー・レビー第9彗星(SL9)との衝突は、予想を大きく超える破壊力ゆえ、我々現代人に多大な衝撃をもたらした。6500万年前の恐竜絶滅の原因も、小惑星との衝突の可能性が高いとする説も証明されつつある。こうした事実から、「スペースガード」という考え方が提唱され、近年、国際的な組織も作られた。地球上の生命の進化にも、地球外の要因が大きく関わっていることが明らかになるにつれ、生命の尊さや、宇宙における人類の存在意義というものを問い直す必要があるのではないか。 また、地球そのものの死が必ずやって来ることも重大な事実である。それは今から50億年後の、太陽が死を迎える時でもある。一般に、星の死はまた新たな星の誕生につながる。その際に宇宙に放出された重元素は新しい星に取り込まれ、やがてはその惑星上の生命体を構成する重要な要素となる。つまり、我々は「星の子ども」なのである。 D宇宙開発の歴史と意義 我々の地球は、広大な宇宙のなかの一つの星にすぎない。けれども、暗黒の宇宙に浮かぶその姿は、宇宙飛行士の目には美しく青き生命体のように映るという。このように、人類が宇宙に進出した大きな成果の一つが、この「宇宙のなかの地球」という視座の確立ではないだろうか。さらに、宇宙から地球環境を監視することは、現代の環境問題の解決の糸口をつかむことにつながるであろう。 また宇宙開発は、「国際宇宙ステーション」の建設にみられるように、国際協力の場でもある。 E宇宙における人類の位置 宇宙の空間的な広がりと、時間的なつながりのなかで、人類の置かれた位置を考える。 「われわれはどこから来て、どこへ行くのか」という哲学的な命題でもある。 地球上に誕生した人類が、遠い昔から夜空を見上げて宇宙の神秘に思いを馳せ、その真理を探究し続けるのは、宇宙創成以来およそ150億年の歴史を背負うものとしての当然の行為なのかもしれない。 F自然体験の重要性 天文学の歴史をふり返ると、「満天の星空」が人類に与えてきた影響は計り知れないものがある。しかし現代は、それが失われつつある。「天の川」を見た経験を持つ子どもは時代と共に減少している。宇宙時代とは言いながらも、実際に子どもたちが“宇宙を感じる”体験が難しくなっている。科学館のプラネタリウムや観望会を利用するのも一つの方法であろうし、現代でもまだ残される天文民俗の風習としての、七夕や十五夜(中秋の名月)をうまく活用することも考えられる。 天文学を学ぶ目的の一つは、地球の大切さや尊さを知ることである。そしてそのことが、現在の地球環境問題を解決するに最も重要なポイントの一つと思われる。即ち、「宇宙のなかの、かけがえのない地球」というグローバルな視点を我々一人ひとりが持ち、自然の偉大さと人間の小ささとを再認識することが重要だと私は考える。 中沢 陽 ( 元 新潟県立自然科学館 自然・天文課 ) <写真:彗星衝突の跡を残す木星> '94年7月20日午後7時50分(新潟県立自然科学館 撮影) |
リンク集 |
星空のかなたに<テーマ曲>(Copyright:中沢 陽 1995/Piano:大澤俊秀) | |
星☆日記(木星食 2001年8月16日:中沢 陽) | |
日本天文学会2009年春季年会(天文教育) | |
国立天文台・星空情報 | |
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